相殺
不法行為による損害賠償債権は受働債権としての相殺ができない。
まず、自働債権と受働債権の違い。
自働債権・・・自動ではなく自働です。働くです。
自働と聞いて、ピンと判断するのは難しいですね。
100万円を支払はなければならない(受働債権)人が、同じ人から100万円貰えるお金(自働債権)があれば、相殺できます。
自働・・自らに働いてくるお金と覚えればいいのでしょうか。
受働・・受け手に働いていくお金という感じでしょうか。
具体例で考えると、
車にはねられて、100万円の慰謝料がかかってしまったとします。
そのはねた車の持ち主は、なんと、100万円を借りていて、払わなければならない人でした。
この場合、はねられた人は100万円の慰謝料は貰えるので、自働債権になります。
一方、借りてた100万円は支払わなければならないので、受働債権になります。
不法行為による損害賠償債権ですが、自働債権としての相殺はできます。
自分から慰謝料はいらないですから、100万円の借金はチャラにして下さい、と言えるのです。
しかし、逆から考えると、
100万円を貸してた車の持ち主は、貸してた100万円は貰えるので、自働債権。
慰謝料の100万円は払わなければならないので、受働債権。
まったく逆です。
そして、車の持ち主から、不法行為から生じた損害賠償額である慰謝料100万円(受働債権)と、貸してた100万円を相殺できないのです。後で、貸してた100万円(自働債権)は返してもらえるにせよ、とりあえず慰謝料100万円は払わなければなりません。
被害者に対して、迅速かつ現実的な弁済をして、被害者の救済を図る趣旨と解されてます。
よって、「不法行為による損害賠償債権は受働債権としての相殺ができない(第509条)」となるわけです。
他にも差押禁止債権も受働債権としての相殺ができません。
差押禁止債権には、給料、ボーナス、年金、他これに類似するもの、があります。
給料も全額ではありません。給料の金額にもよりますが、4分の3程度です。