問題5

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問題5
司法権の限界に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。

1 大学は、国公立であると私立であるとを問わず、自律的な法規範を有する特殊な部分社会を形成しているから、大学における法律上の紛争は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、その自主的・自律的な解決にゆだねられる。

解説
富山大学事件
授業担当停止措置を受けた教授の授業を、代替措置に従わず、その授業を受け続けた学生の単位不認定を不服として訴えた訴訟。よって妥当。

2 法律が、国会の両議院によって議決を経たものとされ、適法な手続によって公布されている場合、裁判所は両院の自主性を尊重して、法律制定の際の議事手続の瑕疵について審理しその有効無効を判断すべきでない。

解説
約50年前の警察法改正無効事件
理由がよく分からないのだが、当時の参議院での議決が無効であると主張している。なんらかの強行採決が行われたのだろうか。しかし、裁判所は警察法が適法に両院で議決されている限り、両議院の自主性を尊重し、有効無効は判断できない。としている。

3 政党の結社としての自主性にかんがみれば、政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであり、政党が党員に対してした処分は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判は及ばない。

解説
共産党袴田事件
完全に個人の名前が事件名になってしまった例。政治家だからいいのだろう。ソ連共産党に学んだ、袴田里見は共産党の幹部だったが、党を批判した為、党規約にのっとり除名処分を受けた。党所有の家屋に住んでいた袴田は当然党に家屋を明け渡さなければならないのだが、それを拒否。よって共産党から訴えられてしまった。結局、党の内部規約の問題に裁判所の審判権は及ばないとされた。
よって妥当。
なお、地方議会の議員の除名処分には裁判所の審判権が及ぶとされる。

4 衆議院の解散がいかなる場合に許されるかは、裁判所の判断すべき法的問題であるのに対して、これを行うために憲法上必要とされる助言と承認の手続に瑕疵があったか否かは、国家統治の基本に関する政治的な問題であるため、裁判所の審査権は及ばない。

解説
55年前の事件苫米地事件
こちらも個人名(苫米地義三)が記されている事件。吉田内閣の頃のお話。古い!1945年に終戦なので、その7年後です。なんと衆議院が解散されたのはこれで2回目なのです。1回目は憲法第69条の解釈により、衆議院で内閣不信任案を可決し、衆議院を解散するという段取りを経た。しかしこの2回目の衆議院解散は、今では当たり前になった内閣不信任案を経ない内閣の抜き打ち解散。これにより失職し、その後選挙で当選すればよかったのだが落選した苫米地義三は、解散の仕方が憲法にのっとっていないとして出訴。しかし、衆議院解散の仕方の是非は裁判所審査権に及ばないとされた。
問題の前半が誤り、衆議院の解散がいかなる場合に許されるかは、裁判所の判断すべき問題ではない。よって誤り。後半は正しい。

5 具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても、宗教上の教義に関する判断などが必要で、事柄の性質上法令の適用により解決するのに適しないものは、裁判所の審判の対象となりえない。

解説
板まんだら事件
本尊「板まんだら」を祭るお堂を作る為と称した寄付金なのだが、実はその「板まんだら」は本尊ではなかった。よって、要素の錯誤があるとして、寄付金の返還を求めた訴訟。裁判所はその「板まんだら」が本尊か本尊ではないかを判断しなければならない。その解釈には宗教上の意味合いが強く法解釈ができない。よって、具体的争訟だが裁判所の解決不可能な事件とした。
しかし、契約上の詐欺行為に近い感じがするが、どうだろう・・・裁判所としては、「宗教上の理屈」 対 「法律の論理」はうまく交えないと判断したのだろうか。

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