問題26(行政指導)

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 次の文章は、開発指導要綱に基づく金銭負担を要求した市の行為の違法性に関する、最高裁判所判決の一節である。この判決の考え方から導かれる内容として、妥当なものはどれか。
 なお、文章中のXは上告人(住民)、Yは被上告人(市)を指す。


「指導要綱の文言及び運用の実態からすると、本件当時、Yは、事業主に対し、法が認めておらずしかもそれが実施された場合にはマンション建築の目的の達成が事実上不可能となる水道の給水契約の締結の拒否等の制裁措置を背景として、指導要綱を遵守させようとしていたというべきである。YがXに対し指導要綱に基づいて教育施設負担金の納付を求めた行為も、Yの担当者が教育施設負担金の減免等の懇請に対し前例がないとして拒絶した態度とあいまって、Xに対し、指導要綱所定の教育施設負担金を納付しなければ、水道の給水契約の締結及び下水道の使用を拒絶されると考えさせるに十分なものであって・・(中略)・・Xに教育施設負担金の納付を事実上強制しようとしたものということができる。・・(中略)・・右行為は、本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるといわざるを得ない。」

(最一小判平成5年2月18日民集47巻2号574頁574以下)


裁判所判例より

1 事業主に対して教育施設負担金の納付を求める行政指導の内容を指導要綱によって定めることは、行政指導の限度を超える違法な公権力の行使である。

解説
誤り。
教育施設負担金の納付を求める行政指導の内容を指導要綱によって定めることは自体は、違法ではなく、強制することは違法であると言っている。


2 Yは、Xが行政指導に従わない場合には、水道の給水契約の締結の拒否等の制裁措置を背景として行政指導に従うことを強制することが許される。

解説
誤り。
行政指導は強制してはいけないとされている。(行政手続法第32条)


3 事業主に対して教育施設負担金の納付を求めること自体は、事業主による納付の任意性を損なうことがない限り、違法ということはできない。

解説
正しい。
裁判所の判例全文を見ても分かるとおり、地域情勢に照らして規定した行政指導であるが、一千万円以上もする教育施設負担金の納付ですから、かなりの金銭的負担であるのは間違いなく、寄付と言うには強制度が高く、水道供給の拒否の制裁措置から見ても、義務と言わざるを得ない。しかも権利義務に関わることであるにもかかわらず、条例等で定めておらず、水道供給拒否自体は水道法に違反するものであるので、このような判決になっているのでしょう。
しかし、強制性がなければ、誰も払わない気がします・・・。


4 教育施設の充実にあてるために事業主に対して寄付金の納付を求める場合には、行政指導によるのではなく条例を制定して行わなければならない。

解説
誤り。
任意であれば、条例ではなく行政指導によって、寄付金等を求めることは違法ではない。


5 教育施設負担金の減免の前例がない場合には、Yは他の事例との平等を期すため、Xの懇請を拒絶しなければならない。

解説
誤り。
この判例ではそのようなことはうたわれていない。
もしかしたら、武蔵野市の内部指導でうたわれていたかもしれませんね。



当時の武蔵野市は高度経済成長からバブル期へかけてマンション建設が乱立していて、日照権の問題や、建設騒音、環境破壊などの問題から、この指導要綱は地域住民にとってはありがたかったかもしれません。
しかし、建設会社や不動産会社、土地を売りたい地主にとっては、魅力的な地域であったのでしょう。

あらゆる背景から、トラブルは生じてくるのですね。

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