問題28(民法 時効)

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時効制度の存在理由については、次のような考え方の対立がある。


A説 「時効とは、取得時効が成立した場合には無権利者であった者に権利を取得させ、消滅時効が成立した場合には真の権利者の権利を消滅させる制度である。」

B説 「時効とは、真に権利を有する者または真に義務を負わない者が、長期間の経過によってそのことを証明できないことにより不利益を被ることのないよう救済するための制度である。」


時効の援用(民法145条)に関する次の説明のうち、最も妥当なものはどれか。


相当な読解力を要する難解な問題。試験作成者には教授関係の方もいらっしゃるので、学説からの問題も出てきます。
試験では捨て問題のひとつとなるでしょう。
しかし、法律的思考能力を身に付ける意味でも、考えて見たいと思います。
深く考えることによって、他の問題が易しく思えるようになるかもしれません。


まず、A説は、実際の法律効果を発生させる実定法を根拠に考えることができる。
B説は、裁判所での確定的な証拠としての材料となると考えられている。このことからそれぞれ考えてみると、A説は裁判以前に、時効によって、権利義務の得喪が発生すると言うことを意味し、B説は裁判上の訴訟法説を意味する。
これらのことを考えても、以下の肢は分かりずらいので、裁判上の訴訟法説であるかないかで考えてみようと思う。

Wikipediaより「時効」

1 時効の援用は、時効の効果が道徳に反する面があるため、それによる利益を受けるかどうかを当事者の良心にゆだねたものであるとの説明は、A説と矛盾する。


裁判上の訴訟説ではなさそうなので、A説となりそう。時効を援用することによって、裁判前に私人間の法律効果が決まるのですよとする考え方。
よって、誤り。


2 時効の援用は、民事訴訟法上の弁論主義がら求められるものであるとの説明は、B説と矛盾する。

解説
裁判上の訴訟法説なので、B説。よって誤り。


3 時効の援用は、はじめに遡って権利の得喪の効果を生じさせるものであるとの説明は、A説と矛盾する。

解説
時効の援用が、裁判上の訴訟材料となるという考え方ではなく、裁判外の法効果を生じさせると言う考え方なので、A説。よって誤り。


4 時効の援用は、権利関係を証明するための法廷証拠を提出する行為であるとの説明は、B説と矛盾しない。

解説
時効の援用が裁判上の証拠材料になるという考え方なので、B説よって正しい。
ゆえに4が本問の正解となる。


5 時効の援用は、法定の停止条件であるとの説明は、A説と矛盾する。

解説
時効を援用することによって、消滅時効が完成しますよ、という裁判外の権利得喪の法効果を生じると言う考え方。よってA説。ゆえに誤り。


時効にはこのようなふたつの考え方があるようなのだが、現実には明確な区切りは無く、現実の争いの中で、入り混じって判断材料とされているようだ。


試験当日にこのような問題で、深く考えすぎてしまうと、まずいので表面上だけ汲み取って答えを導き出せるようになれればいいと思う。


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