問題29(民法 即時取得)
美術商Aは、画廊に保管しておいた自己所有の絵画が盗難に遭い、悔しい思いをしていたが、ある日、Bが運営する個人美術館を訪ねた際、そこに盗まれた絵画が掲げられているのを発見した。Aは、その絵画を回収するための次のような行動をとることを考えている。Bに即時取得が成立しているとして、Aの行動に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、Cは商人ではないものとする。
1 Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画は、ある日それまで面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであることがわかった。Aは、買取りの日から2年以内であれば、Bに対して、その絵画の買取請求権を行使することができる。
解説
正解のような気がしますが、後半の買取りの日から2年以内でなくて、盗難の日から2年以内に回復を請求できる。(民法193条)微妙・・・
2 Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画は、ある日それまで面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであることがわかった。Aは、買取りの日から2年以内であれば、Bに対して、保管に要した費用を支払って、その絵画の引渡しを求めることができる。
解説
こちらも正解のような気がしますが、肢1と同じく、後半の「Aは、買取りの日から2年以内であれば」、ではなく、盗難の日から2年以内であればの誤り。微妙・・・
3 Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画は、ある日それまで面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであることがわかった。Aは、盗難の日から2年以内であれば、Bに対してまったく無償で、その絵画の引渡しを求めることができる。
解説
財団法人 行政書士試験研究センターでの解答では、こちらが正しいとなっております。
「Bに対してまったく無償で・・」となっているのですが、通常ではBが必要費を負担している場合は、Aはその必要費を償還しなければなりません(民法196条)。ですが、Bが絵画からの果実を取得している場合はその必要は無く、Bの負担となります。
そこまでは問題に書かれていないのですが、Bの個人美術館に絵画を飾っているとなると、なんらかの収益が発生していると考えられます。その収益が果実であると判断できるようです。
となると、やはりAはまったく無償で絵画をBから返還してもらえることになるのでしょう。
難しい・・・
4 Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画はBがオークションで落札したものであることがわかった。Aは、盗難の日から2年以内であれば、Bに対して保管に要した費用を支払って、その絵画の引渡しを求めることができる。
解説
オークションで買った場合、民法194条より、Aはオークションでの購入代金をBに支払わなければ、その絵画を返してもらえません。(他に公の市場、商人からの買取りの場合)
Cによる持ち込み買取りの場合と異なります。
なぜこのような差が生じているのかというと、おそらく、持ち込み買取りの場合は、BはCに対して、「この絵画は、盗難品や遺失物ではありませんよね。」と確認して買い取る必要が有ります。Cの意思表示に偽りがあれば、BはCへ損害賠償を請求することになります。
一方、オークションからの購入であれば、正規ルートなので、Bにそこまでの責任はないことになります。Aはオークション会場へ連絡してどのようなルートで絵画を仕入れたのか確認して、盗難者を見つけなければならないことになるでしょう。
5 Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画はBがオークションで落札したものであることがわかった。Aは、オークションの日から2年を超えても、Bに対してオークションで落札した金額と保管に要した費用を支払えば、その絵画の引渡しを求めることができる。
解説
盗難の日から2年以内に回復請求しなければならないので(民法193条)、オークションの日から2年となると、盗難されたのはもっと前なので、2年以上経過してしまっている。よって誤り。
関連知識として、平成19年12月10日に遺失物法(民法240条)が改正になりました警察のサイト。
本問の場合の、取引行為で遺失物を取得した場合は、2年以内の回復期間(民法193条)。取引行為ではなく、単純に落し物などの遺失物の取得者は、6ヶ月以内の回復期間でした(旧民法240条)。
改正によって、回復期間が6ヶ月から3ヶ月へ変更になりました。
理由は、膨大な落し物による、保管場所の管理費用の増加など。旧民法240条は明治32年の制定なので、時代のニーズにそぐわなくなったのでしょう。
他の変更点として、
安価な物(傘、自転車など)は2週間以内に変換できない場合は、売却が可能。クレジットカードなどは拾ってから3ヶ月経過して、持ち主が現れなかった場合でも、所有権取得は不可など。
鉄道業者などは、警察署長と同様、遺失物を売却する権利が有ります。
法改正問題として、何らかの出題がされるかもしれませんね。
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