問題32(民法 直接強制)
次のア~オの事例のうち、直接強制の方法によって債務者の債務の強制的実現を図ることができるものは、いくつあるか。
ア 銀行から500万円を借り入れた企業が、返済の期限が到来したにもかかわらず、返済をしない事例
解説
参考Wikipedia与える債務、為す債務
初めて知りました、この言葉。
与える債務・・・物の引渡しを目的とする債務。直接強制、間接強制が可能。
為す債務・・・物の引渡し以外を目的とする債務。直接請求はできない。間接強制や代替執行で対処する。
そうすると、500万円の返済は物の引渡しなので、与える債務。よって直接強制が可能。
イ 画家が、顧客との間で顧客の似顔絵を描く契約を結んだにもかかわらず、似顔絵を描こうとしない事例
解説
似顔絵を描くという行為なので、為す債務。よって間接強制か代替執行で対処。
ウ カラオケボックスの経営者と周辺住民との間で騒音をめぐって紛争が起こり、夜12時から朝10時まではカラオケボックスの営業をしないとの合意が両者の間で成立したにもかかわらず、夜12時を過ぎてもカラオケボックスが営業を続けている事例
解説
カラオケボックスの営業行為の是正なので、為す債務。よって、間接強制か代替執行にて対処。
エ ある者の名誉を毀損する記事を雑誌に掲載した出版社が、名誉毀損を理由として謝罪広告の掲載を命じる確定判決を受けたにもかかわらず、謝罪広告の掲載をしない事例
解説
謝罪広告の掲載という行為なので、為す債務。よって間接強制か代替執行にて対処。
オ 建物の賃貸借契約が終了し、賃借人が建物を明け渡さなければならないにもかかわらず、賃借人が建物を占有し続けている事例
解説
建物の引渡しという物の引渡しを伴う債務なので与える債務。よって直接強制が可能。
よって正解は二つ。
なんだか微妙な問題ですね。
イの画家が似顔絵を描く行為は、似顔絵の引渡しも絡んでくるので、与える債務のような気もするし、ウで、騒音によって損害が発生すれば、損害賠償の請求で直接強制も可能かも知れません。
難問というより、微妙な問題です。
ちなみに、行政行為の直接強制とは意味が異なります。
直接義務者の身体や財産に実力を加えて行うので、個別の法律による根拠が必要になります。例えば、出入国管理法による強制送還など。
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