問題34(民法 使用者責任)

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次の文章は、民法715条1項の適用が争点となった最高裁判所判決の一節である。空欄(ア)~(エ)に当てはまる語句として、正しいものの組合せはどれか。なお、文章中のYは上告人(被告)を指す。


 「①甲組は、その威力をその暴力団員に利用させ、又はその威力をその暴力団員が利用することを容認することを実質上目的とし、下部組織の構成員に対しても、甲組の名称、代紋を使用するなど、その威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたこと、②Yは、甲組の1次組織の構成員から、また、甲組の2次組織以下の組長は、それぞれその所属組員から、毎月上納金を受け取り、上記資金獲得活動による収益がYに取り込まれる体制が採られていたこと、③Yは、ピラミッド型の階層的組織を形成する甲組の頂点に立ち、構成員を擬制的血縁関係に基づく服従統制化に置き、Yの意向が末端組織の構成員に至るまで伝達徹底される体制が採られていたことが明らかである。以上の諸点に照らすと、Yは、甲組の下部組織の構成員を、その直接間接の(ア指揮監督)の下、甲組の威力を利用して資金獲得活動に係る事業に従事させていたということができるから、Yと甲組の下部組織の構成員との間には、同事業につき、民法715条1項所定の(イ使用者)と(ウ被用者)の関係が成立していたと解するのが相当である。
 また、上記の諸点及び①暴力団にとって、縄張や威力、威信の維持は、その資金獲得活動に不可欠のものであるから、他の暴力団との間に緊張対立が生じたときには、これに対する組織的対応として暴力行為を伴った対立抗争が生じることが不可避であること、②甲組においては、下部組織を含む甲組の構成員全体を対象とする慶弔規定を設け、他の暴力団との対立抗争に伴い発生する対立抗争における暴力行為を賞揚していたことに照らすと、甲組の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為は、甲組の威力を利用してその資金獲得活動に係る(エ事業の執行)と密接に関連する行為というべきであり、甲組の下部組織の構成員がした殺傷行為について、Yは、民法715条1項による(イ使用者)責任を負うものと解するのが相当である。

裁判所サイト


民法715条(使用者責任)
「原則、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」

通常は、会社などの経営者や、管理職と従業員との関係を定めたものだが、これが、特殊な任侠の世界でも同じような関係が成り立つのかどうかが問題となった事件。

  • 組長と所属組員との指揮監督関係があった。

  • 資金獲得活動による事業の執行が存在したことにり、使用者と被用者の関係があった。

  • その資金獲得活動における他の暴力団との対立抗争による殺傷行為の関連性が認められる。

  • よって事業の執行に伴う被用者が行った殺傷行為であるので、組長は使用者責任を負う。




  • よく考えれば、難しい問題ではないのでしょうが、文章が長いので、少し戸惑う部分が有りますね。

    試験では、難しい問題と、易しい問題の判断を素早くできるようにすることが求められると思います。

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