問題30(民法 先取特権)
Aは、Bから建物(以下、本件建物という)を賃借し、Aは、その建物内に電気製品(以下、本件動産という)等を備え付けている。Bの先取特権に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア 本件動産がCの所有物である場合に、本件動産について、Bは、先取特権を即時取得する事はできない。
解説
民法 第313条 第2項
建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
とあります。
よって誤り。
イ Aが本件動産をCから買ったが、まだCに対して代金の支払いがない場合において、本件動産についてCの先取特権がBの先取特権よりも優先する。
解説
誤り。
動産の先取特権の順位(民法330条)として、
1、不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権
2、動産の保存の先取特権
3、動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務又は工業の労務の先取特権
例えば、賃貸マンションに住んでいるJohnさんが、パソコンショップで、パソコンを買ったが、支払いは後払いとなっていた。
Johnさんは家賃が滞っていて、催促を受けていた。大家さんは明け渡しを求めていたが、Johnさんは応じなかった。そこで大家さんは期限を切って、部屋にある売買代金未払いのパソコンを差し押さえた。
この場合、大家さんは、Johnさんがパソコンショップに払う代金よりも、優先して家賃の弁済に当てることができる。
今ではこういったケースはあまり無いでしょう。パソコンは現金で買うか、もしくはクレジットカードや、割賦払いの信販会社経由での購入でしょう。カード払いの場合は、もはやパソコンショップとカード会社との取引きとなるので、カード会社がJohnさんの口座から引き落としができないかどうかの問題となってきます。
ウ Aがその所有物である本件動産をDに売って引き渡した場合に、本件動産について、Bは、先取特権を行使することはできない。
解説
そのとおり。民法333条
JohnさんがパソコンをPaulに売って引き渡してしまったら、大家さんはそのパソコン自体に先取特権を行使する事ができなくなってしまう。がっ・・・しかし、引き渡す前であれば、Paulの支払うパソコン代金をJohnに届く前に大家さんが差し押さえてしまえば、先取特権を行使できる。(304条)
エ Aがその所有物である本件動産をDに売った場合に、Aの取得する売買代金について、Bは、Dの支払い前に差押えをすれば、先取特権を行使することができる。
解説
そのとおり。
民法304条
JohnはパソコンをPaulに売った場合に、Johnの取得する売買代金について先取特権を行使するには、JeorgeはPaulに支払う前又は引き渡す前に差押えをする必要がある。
オ Aが、Bの承諾を得て、本件建物をEに転貸した場合に、Bの先取特権は、Eの備え付けた動産には及ばない。
解説
誤り。民法314条
JohnがJeorgeの承諾を得てRingoにマンションを転貸していた場合でも、Jeorgeの先取特権は、Ringoの持っているパソコンにも及ぶ。
よって、三つ誤り。
大穴の問題が出題されてしまいましたね。
先取特権・・・
民法は範囲が広いので、捨てていたのですが、侮れません。
イの動産の先取特権の優先順位を間違ってしまいました。売買代金が一番優先されるのかと思っていたのですが、意外でした。理由が出てきません。売買は弱いと覚えておきましょう。
他の先取特権の順位として、
≪不動産の先取特権の優先順位≫
1、不動産の保存(修理、登記費用、契約費用など)
2、不動産の工事(増加額が現存する場合のみ)
3、不動産の売買(利息も含む)
≪一般の先取特権の優先順位≫
1、共益の費用
2、雇用関係
3、葬式の費用
3、日用品の供給
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